前回に引き続き、シャネルのアイコンバッグ「マトラッセ」のリペア事例をご紹介いたします。
今回ご依頼いただいたのは、長年ご愛用されてきたラムスキン素材のマトラッセで、銀面の経年劣化による独特なテカリやくすみが見られ、安っぽい感じの状態でした。
また、角部分には擦れによるダメージがあり、全体的に型崩れも進行していたため、これらの症状をケアさせていただきました。
【before】

【after】

「銀面」という言葉は、革に詳しい方でなければあまり馴染みがないかもしれません。
簡単に言うと、動物の皮を「革」として使えるように鞣したあと、見た目を整えたり、使いやすくするために表面に施される加工のことです。
この加工された表面層を「銀面」と呼びます。
バッグや財布などのレザー製品は、この銀面によって美しいツヤや色味、質感が生まれます。
ただし、革そのものではなく、あくまで加工された表面層なので、時間が経つにつれて擦れや傷がなくても、何となく違和感のあるくすみやテカリが出てくることがあります。
これは、車の塗装面が古くなってくると、いくら磨いても新品のような輝きが戻らないのと似ています。
革製品も同様に、表面の加工が劣化してくると、見た目に影響が出てしまうのです。
そのような場合には、専用の薬品を使って古くなった銀面を一度取り除き、あらためて新しい銀面を形成することで、革本来の質感を活かしながら、見栄えの良い状態に整えることができます。
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【after】

近年、リユース市場は目覚ましい成長を遂げています。
2009年度には11,274億円だった市場規模が、2023年度には31,227億円にまで拡大しており、今後もさらなる成長が見込まれているようです。
経済新聞によると、大手10社だけで1兆円規模のシェアを占めているとのことで、やはり大手の影響力は非常に大きいと感じます。
そんな中でよく耳にするのが、「色塗りされた中古品は価値が下がる」という話です。
確かに、見た目が不自然な塗装や、元の色を隠すためにベタ塗りされた商品、調色の手間を省いて何でも黒に染め変えしたような商品が市場に出回っているのも事実です。
こうした商品は、見た目の違和感やオリジナル性の欠如から、確実に価値が下がってしまいます。
しかし、すべての「塗り有り」商品が価値を落とすわけではありません。
正しい方法で丁寧にケアされた商品は、むしろ価値が上がることもあります。
なぜそのようなことが言えるのかというと、革修復どっとコムでは、職人育成の一環として、価値が下がった塗り有り商品をあえて仕入れ、塗料を丁寧に取り除いたうえで、新たに銀面を再構築する方法でリペアを行っています。
その結果、修復後の商品は、購入時よりも高い価格で販売されることがあるのです。
特に、状態の悪い塗り有り品ほど、修復の工程で学びが多く、職人の技術向上にもつながります。
つまり、見た目が酷い商品ほど、修復によって価値が高まる可能性があるということです。
今回ご紹介しているバッグは、角擦れこそ見られるものの、全体的には経年による銀面の劣化が主な症状です。
銀面が劣化した革は、ただクレンジングして上から塗るだけでは、元の銀面に馴染まず、塗装したような印象が残ってしまいます。
そうした場合には、古くなった表面を一度取り除いてから加工を施すことで、より自然で見栄えの良い仕上がりにすることが可能となり価値が上がりやすくなります。
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【after】

今回のリペアでは、背面に多数見られた引っ掻き傷も、銀面を新たに形成することで、ほとんど目立たない状態にまで仕上げることができました。
傷の深さや広がりによって修復の難易度は変わりますが、今回は幸いにも、傷の部分に革の表面層がしっかり残っていたため、レザーボンドで丁寧に接着し、ウォーターリーフを使って境目をなじませたうえで銀面を再構築することで、自然な仕上がりに近づけることができました。
なお、使用したレザーボンドとウォーターリーフは、いずれも革修復どっとコムのオリジナル溶剤です。
革の特性に合わせて開発されたもので、繊細な作業にも対応できるよう設計されています。
一方で、革の表面がめくれてしまい、銀面そのものが失われている場合には、どうしても痕が残ってしまうことがあります。
そうしたケースでは、無理に加工を加えることで、かえって「塗り有り」の印象が強くなり、結果として商品の価値を損ねてしまう可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
ご依頼いただいた商品にそのような症状が見られる場合でも、できる限り自然な仕上がりを目指して、最善を尽くし、仕上がりの見栄えと、価値を損なわないことのバランスを見ながら、過度な加工は避けるよう心がけています。
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今回のポイントは、銀面劣化による不自然なテカリをナチュラルに見栄えよくすること、背面の傷を無理のない範囲で形成すること、そして型崩れをプレスやアイロン、芯材を入れずに出来る範囲での形補正を施すケアになります。
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【after】

画像では比較が難しい部分ではありますが、消臭についても概ね改善が可能です。
革製品に染み込んだニオイは、見た目では判断できないため、リペアの過程での対応が重要になります。
特に、長期間使用されたバッグなどには、保管環境や使用状況によってさまざまなニオイが蓄積されていることがあります。
革修復どっとコムでは、革の質感や風合いを損なわないよう配慮しながら、独自開発した方法で消臭処理を施しています。
完全に無臭にすることは難しい場合もありますが、日常使いに支障がない程度まで改善できるケースがほとんどです。
見た目の美しさだけでなく、使う際の快適さも含めてケアすることが、リペアの大切な役割だと考えています。
消臭について詳しくは、こちらからと存じます。







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