エルメスと言えば、誰もが憧れる最高級のブランドです!
エルメスをキーワードに検索していたら、「エスプリ思考」という本を見つけました。
本社副社長の体験とエルメスの哲学が語られた本です。
革修復どっとコムは、バッグや財布を販売している訳ではありませんが、職人育成にあたりとても参考になりました。
エルメスのシリーズには、目で見る楽しさと、商品開発の物語があり、コンセプトの奥深さも楽しむことが出来ます!
わたしたち、革修復どっとコムがエルメスなど高価な商品を取り扱う上で、今まで取り組んできたことは、こちらの記事に記載させて頂いております。
それではエルメスのメンテナンスにつきましてご紹介をさせて頂きます!
当店のメンテナンス方法と取り組みですが、水に漬け込んだり、丸洗いするといったクリーニングではなく、お肌と同じ様に「クレンジング」の観点で表面の汚れを落とします。
エルメスの素材バリエーションは豊富で、トゴやトリヨンクレマンス、ヴオーエプソンなど革シボがある素材は、シボを潰したり厚みをつぶすなど、ストレスを掛けないようにクレンジングします。
そして色褪せや擦れ浸透して落としきれないシミは、美容整形の観点で傷の形成や補色を施します。
エルメスにはレザーの触り心地にコンセプトがあります!
何だと思いますか?
「若い女性のお肌」がコンセプトになります。
この質感を補色でも出したい!
当店は正規店ではないので、エルメスと同じ配合剤を入手することは出来ないので、全く同じ質感を出すことは出来ませんが、研究を重ね、近い感じの質感が出せるようになりました。
自分だけの感覚では、ダメだと思っていたので、私の友人に、エルメスなどブランド品の新古品を仕入れ、ネットで販売しているバイヤーがいます。
バイヤーと修復師にこれはいい!
入れ過ぎてはいけませんが、張りと滑らかさを出すために、着色剤(顔料・染料)・バインダー生成の配合・トップコート(色止め)の配合で、いい感じの質感が出せるようなりました!
特に効果を発揮しているのが、ボックスカーフです。
ボックスカーフの染め直しは、熟練の職人でも難しいとされている素材です。
ボックスカーフの少し顔が映り込む透明感のある光沢と滑らかな質感が再現できるようになりました。
ですが、状態によりひび割れが出ている場合は、痕が残りますが見栄えよくメンテナンス可能です。
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同じような質感を出すために!
部分的な色あせやシミであれば、全体的な補色が不要なので、質感に注意を払わなくても、色さえ合わせれば、違和感なく仕上がります。
全体的にメンテナンスが必要な状態の場合、いかに、質感を再現できるかに主眼をおいて、クレンジング(クリーニング)方法補色する方法と配合、そして艶感の調整、この三つのバランスがエルメスの質感に近づけるための要素と思っていますが、配合だけではなく、刷毛や筆の使い方も大事になってきます。
革シボのエンボス感が無くなっている場合、痕が残ったりレザー自体がひび割れていたり、弱っている場合、状態も考慮してメンテナンスする必要があります。
見栄えを良くし、質感が出来るだけ変わらないように、そして、重要なことは不自然な仕上りにならないようにナチュラル感を意識してメンテナンスをさせていただいております。
約12年くらい前になりますが、まだまだ経験が浅いころ、アクリル顔料を主体に染め直しをしておりました。
ちょっとした角擦れは、アクリル顔料で十分、キレイに仕上げることが出来ます。
その後、インターネットの普及に応じて、全国のお客様から、ご依頼頂けるようになってくると、全体的に染め直しが必要なケースが増えてきました。
革の構成要素から考えると、アクリルは革には不向きの成分だったのですが、全体的な染め直しでアクリルを使用すると、ひび割れが生じてきます。
顔料とは、塗装や色付けを目的として、幅広く使われている塗料の元になります。
アクリル顔料は、その名の通り、アクリル剤に顔料を配合した塗料になります。
多く使われているのが、皆さんご存知のアクリル絵の具になります。
アクリル顔料は、クリーム状なので色合わせなど水で薄まるので使いやすい利点はあるのですがレザーには不向きでした。
レザー製品は革の表面に何らかの加工がされており、加工された層を銀面と言います。
更に詳しく言うと、バインダー層は、革とバインダー層・トップ層に分かれています。
レザー製品に顔料で補色する場合、バインダーに馴染ませる必要があります。
そのため、全体染め直しを施す場合、トップ層を事前に除去する工程が必要になります。
トップ層は光沢感の調整と色止めの役割があるため、バインダー層と成分が違います。
トップ層を事前に取り除くことで、バインダー層にシッカリと色が馴染みます。
バインダー層に馴染んでいく様子を動画でご紹介します!【早送り】
アクリル顔料は、バインダーに馴染まないので、バインダー層に上塗りした感じになります。
トップ層を事前に除去しなくても密着しません。
バインダー層に馴染まないと浮いた状態になり、ひび割れが生じたり、ベアンなど二つ折り財布の内側が張り付くといった症状が出やすくなります。
アクリル顔料は、クリーム状の半固形です。
バインダー層に馴染ませるには、液体顔料じゃないと馴染みません。
レザー用に配合された顔料を組み合わせて、調色します。
レザーが製品化される前の段階で、色付けをする際に、加工される層になります。
なめしたレザー(※2)をそのまま製品化することが出来ないので、色があるレザーには、柔らかいラムレザーから全てのレザーにあるといっても過言ではない層になりますが、アニリン染めカーフやヌメ革はその層がとても薄く加工されています。
バインダー層はレザーの表面をキレイに整える役割と色付けに重要な層です。
部分的な浅い角擦れなどは、バインダー層が残っているのでアクリル顔料と水でもごまかしができますが、全体的に染め直しが必要な場合、正しい工程を施すことで、レザーの表面を整えることが可能となり、不自然にならないように染め直しが可能になります。
※2なめしたレザー
嫌な話になりますが、動物から剥いだ状態の革には、体毛などの付着物があります。
なめすとは、簡単に言うとクリーニングして付着物を取り除く工程になります。
その後、バインダー層を加工して、着色や染めを施し、艶感を調整して色止めをして製品化され、バッグや財布になります。
クリーニング店でよく聞く工程の一つに、革製品を溶液に漬け込んで丸洗いをする工程があります。
バッグや財布は、構造が複雑で、レザーだけでなく合成素材やキャンパス、内部に芯材が入っていたり、ステッチの縫い方やコーティング加工など、洋服のように漬け込んで洗うといった工程はとても危険な行為になります。
バッグや財布を洗うと、シボのボリューム感が無くなったり、内部に使われている芯材から色が出たりひび割れた部分が硬化したり、ステッチが傷んだりなど危険を伴います。
そのためリスクがある工程は、避けるべきです。
革修復どっとコムでは、危険を伴う工程や現状の状態より悪化させる工程は省いております。
洗って失敗するようなことは無いので、リピーターのお客様には、安心してご依頼を頂いております。
どんなに酷い状態でも『洗う選択』(ダジャレ)をしないで、クレンジングとしみ抜きでメンテナンスさせて頂いています。
革に影響が出ない強力な薬品も取り揃えています。
更に革製品はしみ抜きするとバインダー層も一緒に取れてしまうので、バインダー層に馴染むように染め直しや補色を施し見栄えを良くしていきます。
バッグや財布は、素材・元々の染め方・構造そして状態に応じて、お打合せが重要になります。
クリーニングと言った一括りでは説明ができないため、革修復どっとコムでは、一つ一つ、状態に応じて、必要な工程、仕上がり感、そしてどの程度までメンテナンスをお考えか、お客様のお考えを聞いて、ご提案をさせて頂いております。
状態や構造、素材により、何度かやりとりが必要になるケースが多いです。
そのため、お受けする前に、やりとりでご面倒をお掛けする場合もありますが、ご理解いただきたく存じます。
代表的なシリーズのメンテナンスを解説を入れながら、ご紹介をさせて頂きます。
エルメスを象徴するバーキンです。
世界中のセレブを魅了するバーキンは、女優ジエーンバーキンからの依頼で作られバーキンの名が付いたようです。
今では、中々入手が困難なバーキン!
中古でも数百万する高級品です!
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バーキンと同じくエルメスを象徴するシリーズです。
サックアクロアからケリーに名前が変わった経緯があります。
モナコ公妃のグレース・ケリーから付いた名前のシリーズです。
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ケリーウォレット
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エルメスの中でも人気が高いシリーズです。
丸みを帯びた楕円形が特徴です。
ファスナー付きのバッグとして、
世界で初めて作らてたバッグです。
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カジュアルデザインで人気の高いバッグです。
仕切りが無いので、広々と使える収納力の高さが魅力のバッグです。
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大切な書類を守るしなやかな相棒!
ビジネスマンなら、あこがれるアイテムです!
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上品でカジュアル感があるバッグです。
男女問わず人気の高いシリーズです。
大きくあしらったHのパンチングが上品さを感じさせてくれます。
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エブリンロング
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愛らしい名前とカジュアル感から、大人カジュアルの最強とも言われています。
バッグの開閉部分にベルトが付いているタイプは、ピコタンロックと言います。
サイズとカラーバリエーションがとても多いシリーズです。
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デイリーバッグとしては大変人気の高い
フールトゥです。
キャンバス、ハーフレザー、オールレザーと
ラインナップされフールトゥ。
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定番の財布として愛され続けているベアンです。
形自体はとてもシンプルですが、「H」をかたどったエンブレムが特徴でさりげない高級感が素敵な財布です。
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メッキ加工を施すには、本体から外す必要があります。
再縫製とバニッシュの再加工とセットの修理になります。
色合いはシルバーとゴールドになります。
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コンパクトでスリムなお財布ですが、収納力が抜群で機能性に優れています。
取り外せるカードケースがついています。
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内部も無いんだーに馴染ませるので、表面と同じようにメンテナンスが可能です。
刻印もそのまま残すことが可能です。
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外見はシンプルな一色の財布になっています。
シルクインは内部がエレガントで、
エルメスのパターンが印刷されている
シルク生地に覆われています。
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エルメスの素材バリエーションも豊富です。
きめ細かな型押しレザーや革本来の自然なままの素材まで、かなり精通していないと、素材を見極めることは難しいでしょう!
わたしたち、革修復どっとコムは、素材の種類をメンテナンスに必要な情報として、まずは、大分類に別けています。
シュリンクレザー・型押しレザー
ボックスカーフ
クロコダイル(ワニ)
リザード(トカゲ)
オーストリッチ(ダチョウ)
キャンパス(布地)
アマゾニア(塩化ビニール合成素材)
クレンジングや染め直しなど、工程別で見ると6つに分れます。
各、素材に応じてメンテナンスをさせて頂いております。
シュリンクは、表面に細かい縮みじわをつけたレザーになります。
型押しは、銀面に様々な模様を型押しされたレザーになります。
どちらも特徴的に表面にエンボスがあります。
エンボスを潰さないようにクレンジングと溝(凹)が埋まらないように意識したメンテナンスになります。
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エルメスの代表的な素材です。
生まれて3カ月から6カ月の革で特徴的な方法でなめされ、しっかりとした硬さの中にも、柔らかいスベスベとした質感が特徴です。
スベスベとした肌触りを意識したメンテナンスになります。
光沢感は、顔が少し映り込む位が理想ですが、お好みに応じて、調整可能です!
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エルメスの最高級素材です。
光沢のある素材は、メノウ磨き「リセ仕上げ」が施されています。
製品化されたお品物は、メノウで磨くことが出来ないので、加工で艶を調整します。
ウロコ間の溝が埋まらないように、意識したメンテナンスになります。
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繊細な班が美しく並んだ鮮やかな光沢が特徴の高級素材です。
変色や光沢感が無くなったりするケースのメンテナンスが多い素材ですがお財布だと、折山や淵周りに剥がれが出るケースが多いです。
不自然にならないように傷を形成も可能です。
ウロコ間の溝が埋まらないように、意識したメンテナンスになります。
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羽毛を抜いた跡のクイルマークが特徴です。
クイルマークが細かいほど、高級です。
クイルマークを隠さないよう、そしてナチュラル感をそのまま活かしている深いシボ(シワ)をシッカリ残すことを意識したメンテナンスになります。
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種類カラーも豊富ですが、エルメスのキャンパスは、「トアル」から始まる名前が多いです。
柄がある素材は、色補正が出来ないため、薄く残るケースもありますが、製品の価値を落とさない範囲で最善を尽くしてメンテナンスを致します。
柄が無い素材は、色補正が出来るので、より目立たなくメンテナンスが可能です。
キャンパス生地は、撥水加工をされると、シミになり難くなります。
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エルメスのキャンパスには、コーティングされた素材があります。
2003年位までの使用だったようです。
経年変化で樹脂が黄ばんできます。
樹脂を剥がす方法もありますが、バッグの価値を損なってしまうケースがあるため、現在は、染め変えをご提案しております。
樹脂は浸透性が高いので、内部にシッカリ染料を浸透させて染め変える方法になります。
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ゴム樹脂で加工された素材で、合成皮革素材になります。
ガーデンパーティに多く使われています。
保管中の湿度が要因で、表面が溶けたような状態になることもあるので、保管方法がとても難しい素材です。
状態によりますが、ひび割れが激しい場合、あえてひび割れを残し色褪せや変色を直して、見栄えを良くするメンテナンスとしてご提案させて頂いてます。
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エルメスの修復事例を多数、ご紹介しています。
その他の修復事例は、こちらからご覧いただけたらと思います!
状態とご希望により料金が変わります。
同じ商品でも軽い色褪せであったり、しっかり色褪せしていたり変色や部分的な傷シミなど、それぞれに状態が全く違います。
状態に応じて、お打合せが必要になりますが、ご参考にしていただけたらと思います。
部分的なメンテナンス
エルメスバーキン
20,000円(税別)前後
エルメスケリー
15,000円(税別)前後
エルメスバッグ
12,000円(税別)前後
エルメス財布
6,000円(税別)前後
全体的なメンテナンス
エルメスバーキン
40,000円(税別)前後
エルメスケリー
30,000円(税別)前後
エルメスバッグ
25,000円(税別)前後
エルメス財布
12,000円(税別)前後
※上記は、シミ・色褪せ・染め直しのメンテナンス料金目安になります。
ホツレやレザーの破損やバニッシュの剥がれが場合、別途お見積りとなります。