2019.02.08

ケース別でみる爬虫類レザーのクリーニング

爬虫類レザーはエキゾチックレザーとも言われています。

エキゾチックレザーとは牛や豚、羊などの
家畜として飼育されている動物以外から得られる希少な皮革のことをいいます。

代表的なものにはワニ革・パイソン(ヘビ)・リザード(トカゲ)などがあります。

エキゾチックレザーはなめし方、染め方、光沢の出し方などの工程で、
特殊な加工を施されていることが多いレザーです。

中には、取り扱いがとても難しい素材もあり、ご依頼頂く方の心配も尽きません。

 

シミが浸透したり、変色、色あせが出ると、高級素材が台無しになってしまいますし、
かといって、普通のクリーニングをしようものなら、大変なことになり兼ねません。

なので、正規店でも取り扱いを断られるケースが多いようです。

 

しかしバッグなら、小さいものでも本革なら、最低10万以上はすると思いますし、
エルメスのエキゾチックレザーなら、数百万の高級品ですから、そう簡単に諦めたくないです。

 

でも正規店で相談しても対応不可だったり、
お磨きをしてもらったけど、あまり変わらず高額・・・そんな経験ありませんか?

かといって正規店以外にクリーニングに出すのってあまり情報がなくて不安ですよね?

せっかくのお気に入りのバッグをダメにされないか??

不安に思ってしまいますよね?

 

そこで、今回の記事では爬虫類レザーのクリーニングについて、
実際にあった事例を交えながら爬虫類レザーのクリーニングをご紹介させて頂きます。

 

①染み抜きで抜き取れるケース

シミには大まかに分けると水溶性のシミと油性のシミの2種類があります。

水溶性のシミは抜くことが出来ませんが、油分のシミだとある程度、抜き取ることが出来ます。

事例①の画像のシミは油分のシミだったため、目立たない範囲まで抜き取ることが出来ました。

一気にシミを抜くのではなく、レザーにストレスを与えないよう、徐々に徐々に時間を掛けて
少しずつシミを抜いていきます。

 

事例①の画像です。

油分のシミは、概ね抜き取りました。

水溶性のシミが薄く残りましたが、恥ずかしくないレベルまで改善できたので、
こちらのケースでは染め直しはしないで、今後、残ったシミが焼けてくるなど見栄えが悪くなった時に、
染め直しを検討されてはと、お打合せをさせて頂きました。

しみ抜き前の状態です。

しみ抜き後の状態です。

水溶性のシミはレザーの色素を壊してしまうので、染め直しが必要になります。

食べこぼしの場合、油分が多いケースがあるので、薄くなる場合があります。

油性のシミであれば、時間が経過していてもある程度、抜き取ることが可能です。

 

シミで気を付けたいのが、水溶性のシミが着いて、そのまま放置することです。

水溶性のシミを放置すると硬化してしまう原因となります。

油性のしみ抜きで反応しなかった場合は、そのまま放置しないで、
硬化や悪化しないように処置を施します。

 

dummy

当店が、もっとも注意することは、現状より状態を悪くしない事。
レザーに染み抜き剤が残留しないように、染み抜き剤を調合して、シミだけをピンポイントで抜き取っていきます。

 

②染め直しが必要なケース

①でご案内した通り、染み抜きを行う場合はまずはシミがどの程度まで抜けそうかを部分的にテストします。

シミが抜き取れない場合、色合いや状態に応じて、お客様に状況報告とご提案をさせて頂いております。

 

爬虫類のレザーは、雨や水シミが着くと黒っぽくシミなるのが一般的です。

爬虫類レザーはレザーの特性を活かすために、
銀面がないのでダイレクトにレザーに浸透してしまうのです。

レザーの染め直しの方法でもご紹介しましたが、
アニリンカーフと同じような染め方法で艶感を調整しております。

 

クロコやアリゲーターは、光沢を出すために加工ではなく、メノウ(石)で磨いて光沢を出している素材もあります。

YouTubeで「クロコダイル革瑪瑙(メノウ)磨き」で検索すると動画が出てきます。

物凄い圧力で磨いているのが、分かります。興味のある方は、検索されてはと思います。

 

ご紹介する画像は、実際にテストをしてシミが抜けなかったケースになります。

水溶性のシミが浸透した状態です。

シミが全く反応しなかったので、水溶性のシミと判断が出来ますが、
このテストも重要で、現状より悪くしない範囲でのテストになります。

この段階で染め直しをされるか、されないかお打合せが必要になります。

ベアンの黒ずみ

博士

dummy

シミがどの程度まで薄くなるかテストを施す場合の基準ですが、高級素材を取り扱いさせて頂いてきた中で、
シミを抜こうとすると、素材にストレスを与え、シミを悪化させたり、艶を消すなど危険が伴う工程は
全て排除してきました。

「このシミを抜く」ではなく、「このシミが抜けるか?」の考え方でテストを致します。
ちょっとした考え方の違いですが、高級素材を扱う上で、とても大切なことになります。

擦れによる色褪せ

こちらの画像の商品は全体的に状態は良いのですが、角が擦れにより表皮が剥がれた状態です。

このような状態になった場合、下地を染料で染めて艶感を調整します。

光沢感は、ウレタンや樹脂などグラム単位で調整してレザーに馴染ませる必要があります。

 

光沢が無くなる

こちらはお客様がご自身で艶を出そうと、クロコ用の艶出し剤を使ってみたら、
逆に艶が消え、色合いもくすんでしまい、まだ新しいバッグなのに古ぼけた感じになってしまった状態です。

クロコなどの素材は、メノウで磨かれているので、市販の艶出し剤では艶が消えてしまいます。

艶出し剤は加工で艶を出している素材には有効な場合もありますが、見た目では分かりません。
爬虫類の素材は、ご自身でのメンテナンスは余りおすす出来ません。

全体的な変色・色あせ

擦れたりしないよう、大事にご使用されてきたことが、見てわかるお財布です。

でも経年変化による、色あせだけは防ぐことが出来ませんでした。

若干の黒ずみもありますが、このような状態になった場合、
うろこ状の白っぽい色合いの濃淡を活かして染め直す方をお勧めさせて頂いております。

色合いを若干、濃い目にして、ナチュラルな仕上りになるよう、調整します。

 

 

③状態に応じて、メンテナンスさせて頂いたbefore/afterのご紹介

爬虫類のレザーを染め直す場合、全てご希望の通りクリーニングができない場合がございます。

ご要望の中にはいかにも何かを塗りました!的な仕上りになるような、ご要望を頂くこともあります。
そんな時に最も大事にしているのがは出来るだけ、わかりやすく理由をお伝えさせて頂き、ご提案の上、
クリーニングを受け賜わるようにしています。

それでは、状態に応じてクリーニングさせて頂いたbefore/afterをご紹介します。

ケース1【しみぬき】

しみ抜きである程度、シミが薄くなったので染め直しは致しませんでした。

【befoer】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【after】

レザーにストレスを与えない範囲で、何度も何度もシミを少しずつ抜いていきます。

しかしあまり抜き取ると色素を壊してしまい、手を加えた痕が残る可能性があるので、
丁度、良い所で終わりました。

このシミを隠したい場合、全体的に少し濃い目の色合いで染め直す必要があります。

 

【before】

こちらのベアンは、リザード(とかげ)レザーになります。

シミの輪郭が白っぽくなったので、染め直しをされるか、画像にてお客様とお打合せをさせて頂き、
今後、状態が悪化したときに染め直す方向で、今回は染み抜きだけのクリーニングにしました。

 

ケース2【染め直し・補色・艶感調整】

こちらのバッグは所々に見られる黒ずみと、全体的な若干の色褪せ、メノウ磨きの光沢感が無くなった状態です。

部分的に染み抜きをテストしましたが、全く反応しなかったので、全体的な補色をご提案させて頂きました。

クロコを染める染料ですが、メノウ磨きの場合、中々浸透しないので、普通の染料では弾いてしまい、
不自然な仕上りになるので、粒子のとても細かい染料と浸透剤を活用して補色をします。

黒いシミは、レザー特有の味に見立て、濃淡ぽくなるように、濃度を調整しました。

光沢感については、形になったお品物を圧力を掛けて磨くことは、もうできないので、
艶を出す加工剤を1グラム単位で調整して、表皮に密着させます。

下の動画は実際に配合している動画です。

計算機で割合を計算しながら、微調整をします。

 

【before】

IMG_3465

 

【after】

全体的に補色したのち、エナメル剤を用いて、加工を致します。

不自然な光沢にならないよう、微調整を致します。

長年の努力のかいあって、配合を論理的に計算して、導いてくれるチームも存在します!

それを、修復師が使いこなす連携プレーからなせる業です!

IMG_3475

 

【before】

 

【after】

 

ケース3【ウロコの濃淡を活かして少し濃い目に染める方法】

ご紹介するケリーウォレットですが、黒ずみが染み抜きで反応しなかったため、お打合せの上、
少しでも黒ずみを目立たなくして欲しいとのことで、若干、濃い目の色合いで染め直して、光沢感の調整を致しました。

 

【before】

【after】

ウロコの白い筋を出来るだけ残すことと、黒ずみを目立たなくする上で、いきなり濃度の濃い染料ではなく
配合剤や浸透剤など、調整して少しずつ色合いを濃くしていきます。

無理に濃度を濃くすると染料は、どんどん濃くなり、黒に近い色合いになってしまうので、
微調整しながら、バランスを見て、染め直していきます。

【before】

 

【after】

IMG_4029

【before】

しみ抜きで少しシミを抜くことが出来たので、色褪せた部分など目立たなくする為、
全体的に補色を施し、艶を出して見栄えを良くさせて頂きました。

無理に残ったシミを隠したり、顔料を使うとペイントしたような不自然な仕上りになるので、
染料と配合剤でバランスを見ながら、少しずつ補色していきます。

若干、色合いを濃い目にさせて頂きました。

【after】

ケース4【リザードの表皮剥がれ】

リザードのベアンですが、折山の表皮が完全に剥がれておりました。

樹脂でうろこ感を作り、染め直しと艶調整致します。

【before】

IMG_3265

 

【after】

ウロコが完全に剥離した状態の場合、痕は残りますが、この方法を推奨させて頂いております。

ぱっと見は、分からなくなります!

IMG_3276

ケース5【顔料を用いて不自然な仕上りになったケース】

おそらく、アドカラーなどチューブタイプの顔料を使ってペイントしたことで、クロコらしさが無くなり
水性の艶出し剤で艶を出したせいか、べったりとした仕上がりになっていました。

これ以上の対応ができないとのこで、当店にやり直しの依頼を頂いたバッグです。

バッグ中央のベルト裏面が何故か、ペイントされていませんでした。

 

 

ペイントを全て取り除き、必要に応じて補色後、艶感を調整させて頂きました。

筋の濃淡も戻り、クロコらしくなりました!

 

ケース6【染め替え】

黒ずみが残り、濃淡として残すくらいなら、いっそブラックにとのことで、染め替えをさせて頂きました。

【before】

【after】

レザーの状態がとても良かったので、新調感も出すことが出来ました!

染料は何種類も色がございますが、ブラックの染料は、粒子が細かくレザーに良く馴染みます。

染め替えの場合、ブラックがとても綺麗に仕上がるので、修復する側からすると気持ちよく
馴染んでくれるので、お勧めしたいとこですが、そこは、お好みもあるので、
ご希望をお聞かせいただいてから、対応します!

【before】

内側面も染め替え可能です。

【after】

【before】

パイソン部分の染め替えです。

ウロコの剥がれも予防されたいとのこで、密着剤を少し多くして、強化も致しました。

【after】

ケース7【艶が無くなってしまった状態】

別の修復店へ表面を保護するために鏡面仕上げを依頼されたさそうですが、
逆に艶が消えてこれ以上、対応できないとのことでご依頼を頂きました。

メノウで磨かれた光沢感は、磨いて光沢を戻す場合もございますが、
今回のケースでは全く戻らなかったので、エナメル剤を調合して、艶感を修復させて頂きました。

フタの裏面は加工がされていませんでした。本来の艶感になります。

鏡面加工で艶が無くなった状態がこちらです。

クレンジングで加工剤を取り除きます。その段階で艶が戻る場合もありますが、戻らなかったので、
ケース2でご紹介しました、エナメル剤を調整して艶感を調整します。

【after】

【before】

 

【after】

【before】

【after】

ケース8【マットからハイシャインへ】

マットからハイシャインにすることも可能です。

Hエンブレムのメッキ加工と併せてクリーニングすると、かなりの新調感が出せるかと思います。

【before】

【after】

ケース9【パイソンレザーの染め直し】

全体的に色褪せていたので、パイソンの柄を活かして染め直しをさせて頂きました。

染料の濃度と調整剤で少しずつ染めながら、バランスの良い所で、染める工程をやめて
艶感の調整を致します。

【before】

【after】

【befoer】

【after】

ケース10【ヴィンテージ感を残した染め直し】

こちらのケースは、少し使用感を残してほしいと要望があったため、全体的に軽く染めて、
あえて染めムラを残し艶感を調整致しました。

染料を使用するので、レザーの状態により染めムラが出る場合があります。

染めムラを無くすためには、色合いを濃くして調整しますが、
お打合せの上、あえて残しながらヴィンテージ感を意識したメンテナンスになります。

【before】

【after】

 

エキゾチックレザーのクリーニングを検討される場合

様々なケースでご紹介をさせて頂きましたが、エキゾチックレザーのクリーニングを検討される場合、
お客様と私たちとのお打合せがとても重要になります。

①まずは、現状の状態を画像でお送りください。

②どのようにメンテナンスしたいか、出来る出来ないに関わらず、まずはご要望をお聞かせください!

③ご要望に対して可能か否か、ご提案も含め、お見積りをさせて頂きます。

 

まとめ

エキゾチックレザーの染め直しは、経験値がとても重要になるので、専門の修復師が担当致します。

基本的に染料や浸透剤がベースになりますが、色合いによっては、
元の色素を映えさせる加工剤を活用して補色と併せてナチュラル感を出していきます。

色素復活剤を活用した補色の動画です。

 

 

補色と元の色素を最大に活かして修復していきます。

この動画のお品物です。

【before】

【after】

 

いかがでしたでしょうか!

エキゾチックレザーは希少性が高い上に、繊細で加工の難しいものも多くあります。

そのため、牛や豚、羊、馬などのレザーとは加工方法が違い、
クリーニングもそれぞれのエキゾチックレザーに合わせたクリーニングが必要になります。

そのため、通常の修復店では断られることが多いレザーです。

また、そのレザーの希少性から正規店でも修理用のパーツの在庫が少なく、
正規店へクリーニングの依頼を持って行っても断られてしまうことが多い素材です。

私たちがこの難しいエキゾチックレザーをメンテナンスできるのは、
革ができる工程を知り日々研鑽を積み重ねてきた賜物だと自負しています。

色褪せや変色、シミが出来てしまったら、様々な状態に応じて、

最善の方法をご提案をさせていただいております。

 

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