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革修復どっとコムでは、財布やバッグを染め直す際に、革の製造段階と同じ「銀面生成」技術を用いてメンテナンスを行っています。
これにより、製品の色合いと耐久性を維持し、美しい仕上がりを実現しています。
聞きなれない「銀面生成」について簡単にご紹介します!
革の色褪せやしみ抜きを見栄えよくナチュラルに仕上げる上で必要な基礎知識
動物の皮は、上皮層と真皮層から成り、革として使われるのは真皮層です。
ここから詳しく説明すると難しくなりますが、簡単にまとめると、レザーはバッグや財布などの製品化の前に、表面に何らかの加工が施されて綺麗に見えるようにしています。
皆さんが目で見ている表面は、実際の革そのものではなく、加工された面です。皮が加工されて綺麗になると「革」になります。
加工された革は多様な種類がありますが、大きく分けると三つのパターンに分類できます。以下に、その三つの革の断面図を示します。
スムースレザーは、表面が滑らかで、顔料で塗装されコーティング(トップ層)がある革のことを指します。
一般的にスムースレザーと言われていますが、型押しがされているものもあり、銀つき革とも言います。
トップ層に革の表情に併せて光沢調整と色止めの役割があります。
革そのものの表面をお化粧で隠し、滑らかな表面を保ちつつ、耐久性と美観を兼ね備えた革製品が完成します。
「染料仕上げ」と「顔料仕上げ」のそれぞれの良い所を活かした革を作るために生み出されたのが「セミアニリン仕上げ」です。
顔料を含むベース部分を下塗りし、その上から染料で着色してコーティング(トップ層)が施されています。
この技術は、革の元々の表面を可能な限り保ちつつ、美しく見せることを目的としています。
さらに、不要となる皮を減らし、より効率的に美しい革を作り出す技術でもあります。
この仕上げ方法により、自然な風合いと耐久性を兼ね備えた革製品が完成します。
合成染料のアニリンで染色した革は、本来の表面模様が最大限に美しく活かされることが特徴で、革本来のシボ(自然な凹凸模様)が際立つレザーになります。
ヌメ革は、植物由来のタンニンで鞣されたレザーで、シボ感や経年変化を楽しむことができます。
これらの革は、ナチュラルレザーとしてレザーマニアに人気があり、使い込むほどに風合いが増していくのが特徴です。
レザーの種類や用語は、ブランドごとに独自の名前を付けているので、同じ加工がされていても呼び名が違って沢山の種類があるように思われていますが、実は、大きく分けると上記図式のように3つのパターンに当てはまります。
例えば、牛や羊、ワニなど・・・どのような革でも表面に図式のような加工がなされています。
※ワニ革はリゼ仕上げがあり表面にタンパク質のバインダーを塗り、メノウ石で磨きあげて艶を出す方法です。
革が財布やバッグなど製品化される前に、鞣したのち、表面に加工された「銀面や銀層」に馴染ませて加工する方法を、『革修復どっとコム』では『銀面生成』と言います。
製造段階と同じ加工剤や配合剤を用いて調色し、基本的に1点ごとに手染めを施しています。
この技術により、高品質で美しい仕上がりを実現しています。
製品化される前の段階で「かわ」を漢字で書くと「皮」となります。
皮の表面に何らかの加工が施されると「革」に変わるのです。加工していない「皮」を製品にすることはほぼ不可能です。
バッグや財布などの製品化されたレザーは、加工された「革」を使っているため、表面には何らかの加工層が施されています。
レザー製品に顔料で補色する場合、バインダーに馴染ませる必要があります。
そのため、全体染め直しを行う際には、まずトップ層を事前に除去する工程が必要です。
トップ層は光沢感の調整と色止めの役割があり、バインダー層とは成分が異なります。
トップ層を取り除くことで、バインダー層に色がしっかりと馴染みます。
バインダー層に色が馴染んでいく様子については、動画でご紹介します。
ぜひご覧ください。
大切なレザー製品を美しく保つために、正しい手順でメンテナンスを行うことが重要です。
アクリル顔料と液体顔料には以下の違いがあります:
アクリル顔料
特徴: クリーム状の半固形で、バインダーに馴染まないため、バインダー層に上塗りされた感じになります。
問題点: バインダー層に馴染まないため、浮いた状態となり、ひび割れが生じたり、ベアンなど二つ折り財布の両面に塗装すると内側が張り付くといった不具合が出やすくなります。
使用例: レザーにはあまり適していません。
特徴: バインダー層に馴染みやすく、均一な仕上がりが期待できます。
利点: レザーにしっかりと馴染み、ひび割れや剥がれが生じにくくなります。
使用例: レザー製品の補色や染め直しに適しています。
これらの違いを理解して、適切な顔料を選ぶことで、レザー製品の美しさと耐久性を保つことができます。
アクリル顔料は画像のように絵の具のように半固形になります。
革修復どっとコムでは、溶剤を配合した液体顔料を使用しています。
この顔料は、革の製造段階で使用するものと同じで、染料のように馴染みやすく、ナチュラルな仕上がりが可能です。
動画のように、美しく見栄えよく仕上げることができ、レザー製品の自然な風合いを保ちながら補色することができます。
革修復どっとコムオリジナルの液体顔料です。
バインダー層とは、レザーが製品化される前の段階で色付けをする際に加工される層です。
なめしたレザーをそのまま製品化することは難しいため、色があるレザーには、柔らかいラムレザーから全てのレザーにバインダー層が施されています。
ただし、アニリン染めカーフやヌメ革では、この層が非常に薄く加工されています。
バインダー層は、レザーの表面を綺麗に整える役割を持ち、色付けの際にも重要な層です。
部分的な浅い角擦れなどは、バインダー層が残っているためアクリル顔料と水でもごまかすことができますが、全体的に染め直しが必要な場合には、正しい工程を施すことで、レザーの表面を整え、自然な仕上がりを実現することが可能です。
鞣しとは、動物から剥いだ状態の革に付着している体毛などの汚れを取り除くクリーニング工程を指します。
この工程を経て、革はバインダー層の加工を受け、着色や染めが施されます。
さらに、艶感を調整し、色止めを行うことで、最終的にバッグや財布として製品化されます。
これにより、革製品は美しさと耐久性を兼ね備えたアイテムとして仕上がります。
クリーニング店でよく聞く工程の一つに、革製品を溶液に漬け込んで丸洗いをする工程があります。
しかし、バッグや財布は構造が複雑で、レザーだけでなく合成素材やキャンパス、内部に芯材が使用されています。
そのため、洋服のように漬け込んで洗う工程はとても危険です。バッグや財布を洗うと、シボのボリューム感が無くなったり、内部の芯材から色が出たり、ひび割れた部分が硬化したり、ステッチが傷んだりするリスクがあります。
革修復どっとコムでは、危険を伴う工程や現状の状態より悪化させる工程を省いております。
洗って失敗することはないため、リピーターのお客様には安心してご依頼いただいています。
どんなに酷い状態でも「洗う選択」をせず、クレンジングとしみ抜きでメンテナンスを行っています。
革に影響が出ない強力な薬品も取り揃えており、しみ抜き後のバインダー層に馴染むように染め直しや補色を施し、見栄えを良くしています。
バッグや財布は、素材・元々の染め方・構造、そして状態に応じたお打ち合わせが重要です。
クリーニングと言った一括りでは説明ができないため、革修復どっとコムでは一つ一つの状態に応じて、必要な工程、仕上がり感、そしてどの程度までメンテナンスを行うか、お客様のお考えを聞いてからご提案をさせていただいております。
状態や構造、素材により、何度かやりとりが必要になるケースも多いですが、その分、丁寧に対応しています。
いかがでしたでしょうか?革製品にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると3つのカテゴリーに分類できます。
色褪せたレザー製品の染め直しやしみ抜きを行う上で、これらのカテゴリーを見分け、それぞれの状態に応じた配合剤や濃度の調整が重要です。
レザーの種類と状態に応じて適切に染め直すことで、見栄えよくナチュラルに仕上げることが可能です。
角擦れなどで色褪せた財布やバッグの染め直し修理をお考えの場合や、詳しく確認したいことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせご相談ください。
あなたの大切なアイテムを美しく保つお手伝いをいたします。
私たちは職人の育成を重要なミッションとして、高品質な修理サービスを提供し続けるため、次の世代の職人を育てる取り組みに力を入れています。
①実践的な練習
傷んだブランド品を安く仕入れ、練習用に使用しています。
これにより、職人たちはリアルな修理経験を積むことができます。
②専門的な指導
経験豊富な職人が新しい職人に対して指導を行い、技術を継承しています。
高度な技術を伝えることで、全体のクオリティを保っています。
③多様な修理実績
ルイヴィトン、エルメス、シャネルなどのハイブランド品を取り扱い、さまざまな修理経験を積むことで、対応力を高めています。
④もったいない精神
日本の「もったいない」精神を大切にし、使い捨てではなく、修理して長く使う文化を広めています。