今まで、沢山の修復を行ってきましたが、予想以上に難しい修復で
手間が掛かる場合や、難しいと思いきや意外と簡単に出来てしまう事など
レザーは全て状態が違う為、思うようにいかない事の方が多くございます。
様々なケースがございますが、修復する上で、3つのルールがあります。
①現状より悪くなる可能性がある事は一切しない。
②ナチュラルに自然に仕上げる
③色合い
当たり前と言えば、当たり前なんですが、とても大切な項目になります。
上記を踏まえながら、修復を進めております。
自分で言うのもなんですが、①があるから、とても安心して修復を進めることが
出来ます。
中には、数百万のバッグから、数十万のお財布まで、高価なお品物や
遺品やプレゼント品を預かる上で、もし自分が安心できない事を進めていたら、
お客様はもっと不安になるとの考え方から、絶対に①はもっとも大切なルール
となります。
②のナチュラルに仕上げる
これは、これまでも今からも追求していくべき課題です。
知識、研究は欠かさず積み重ねてきたこと、
今まで沢山の経験を積ませて頂いたお客様のお陰で、深いキズや浸透したシミも
最初の状態より、かなり見栄えよく修復できるようになってきました。
修復師も着実に、一人一人、育ってきております。
我が社の財産です。
わたしから、駄目だしされて、何度も何度もやり直しをして、時には激論バトルを
勃発したり・・・
しかし、少しでも良く仕上げたいからのバトルなので、わたしは良しとしています。
ちょっと話しはそれましたが、深い傷や浸透したシミを、レザーの質感を
残しながらナチュラルに、いかに目立たなくするか!
毎日、毎日、試行錯誤を繰り返しております。
一つ一つ、素材、色、状態が違う為、マニュアルが無く、感覚と配合した後の
質感など、テストの上で修復を進めていきます。
配合と工程が、ぴったりはまると、あとはスムーズに進みます。
③の色合いは、オリジナルの色合いを変えないよう染料や顔料を組み合わせて
色調を致しております。
最初に見た目で同じ色合いを作ります。
見た目で色を作るまでは、とても簡単で誰にでも出来ます。
見た目で同じ色の染料を、レザーに染料を添付して乾かしてみると、
全く違う色合いに変化します。
添付した量や浸透率が要因になります。
そこから、微調整を繰り返し、色合いを合せます。
銀面の残った軽い擦れ程度のキズですと、染料が浸透しないため、
比較的簡単に色調が可能ですが、修復範囲が広いと浸透する場所や
浸透しない場所があり、染料だけでは、仕上りにムラが出てしまいます。
そこで必要な工程が、銀面を作る事になります。
当店は、皮革製造工場から、仕上げ剤や配合剤を入手して
銀面を作る技術を習得しておりますが、
レザーの状態が悪いほど、銀面を作る技術が役立っております。
実際に皆さんが見ているのはレザーそのものではなく、銀面を見ています。
銀面はレザーを隠し、見栄えを良くすることが目的です。
レザーの保護としての役割もございます。
お化粧と同じ役割とお考え頂くと判り易いかと存じます。
新たに銀面を作る事で、レザー保護の強化にも繋がります。
※アニリンカーフやヌメ革は銀面は、構造が違います。
銀面を新たに作る技術を習得した事で、様々な修復が可能になりました!
お客様のお品物をお預かりさせていただく際、
新品のようにして欲しいと、ご要望を頂く事がございます。
そのとき、お伝えする事は、新品のように仕上げる事は出来ません。
現状より良くするメンテナンスとしてお考えくださいと
お伝えしておりますが、沢山のお客様から、
「新品のようになりました!」
と喜びのお声を頂いております。
それでも、新品のようになるとは、今でも申し上げておりません。
残念ながら、新品のようにする魔法はございません。
これから、長く大切にお使いいただく上で、少しでもお役に立てればと
願ってお仕事を受け賜っております。
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