2020.07.23

バニッシュ加工の破損と修理について

バニッシュ加工とは、レザーアイテムのバッグや財布のふち周りや、
レザーハンドルのふち周りに施されている塗装加工のことを指します。

もっとも多いレザーのふち周りの加工の方法で、
多くのレザーアイテムに用いられています。

多くのレザーアイテムに使用されているため、
革修復どっとコムでも多くのお客様から修理のご相談を頂く部分になります。

この記事ではバニッシュ加工の特徴や破損、修理についてご紹介します。

バニッシュの加工とは

バニッシュの加工とは前述したとおり、
レザーアイテムやパーツのふち周りの加工のことをいいます。

バニッシュの加工には、バニッシュ部分を磨いて仕上げるバニッシュ磨きと、
顔料と樹脂や蜜蝋などを用いて塗装を行うバニッシュ塗装、
柔らかい革のふち周りを加工する際に表面の革を裏へ折り返すヘリ返しの3種類があります。

ただ、ふち周りの加工としては、ほとんどの場合、
バニッシュ磨きかバニッシュ塗装が施されているため、
通常、バニッシュの加工といった場合にはバニッシュ磨き、もしくはバニッシュ塗装のことを指します。

合成皮革素材を使用しているブランドの場合、
レザーとは違い、磨いても素材を傷めてしまうため、
バニッシュ塗装を行うことが多いようです。

このバニッシュの加工を行うことによって、
バニッシュの加工をしていないものよりも手触りが良く、
見た目がキレイで、耐久性があがるといったメリットがあります。

また、バニッシュ塗装の場合、
塗装するための顔料を自由に選べるため、
デザインの一部として表面のレザーの色合いとは異なった
色で塗装することで、全体のデザインを引き締める効果もあるようです。

バニッシュとコバの違いは?

バニッシュと同じような言葉でコバという言葉があります。
バニッシュとコバはどちらもレザーのふち周りを指す言葉で、
どちらを使っても正解です。

どちらかというとコバの方がレザークラフトで用いられることが多く
一般的な呼び名ですが、バニッシュはハイブランドのアイテムに使われることが多い言葉かと思います。

革修復どっとコムでは、ハイブランドのアイテムを多く扱っていることから、
レザーのふち周りのことをバニッシュと呼ばせていただいています。

バニッシュの破損原因

バニッシュの加工は主に、レザーアイテムのふち周りの保護や補強を目的に行われています。
バニッシュは擦れによるダメージや皮脂の汚れなどを多くうけることが多く、
他の箇所よりも破損や劣化が起こりやすくなっています。

①バニッシュの擦れによる破損

バニッシュの擦れはバニッシュ部分の色あせや
手触りの劣化、合皮の場合はほつれなどの破損を引き起こしますが、
この状態をさらに放置していると、加工が失われたバニッシュ部分から
破れが発生し、最悪レザーや合成皮革素材の表面に大きな亀裂が入ってしまうことがあります。

擦れによってバニッシュ塗装が色あせてしまったバッグ

 

バニッシュ塗装が剥がれ、表面に破れが生じてしまったアイテム

②皮脂汚れによるバニッシュの破損

レザー製品のハンドルの場合、
どうしても人の手に触れるため、皮脂汚れや人の手についていた汚れが
付着してしまいます。

そうすると、レザー自体が皮脂汚れによって黒ずんでしまうことがあります。
バニッシュ部分もどうように、皮脂汚れによって黒く変色してしまいます。

皮脂汚れによる変色は黒ずみ、見た目が悪くなってしまうため、
せっかく良いブランドの製品を使っていても、見た目の品格を落としてしまうことになります。

皮脂汚れによるハンドルのバニッシュの黒ずみ

③保管中の湿度による破損

意外かもしれませんが、
バニッシュの破損は使用中だけにおこるわけではありません。

保管中の湿度によっても、
バニッシュが破損してしまうことがあります。

これは、加水分解と呼ばれる化学反応が原因で、
バニッシュ塗装を行っているレザーアイテムや合成皮革素材のアイテムに
多く起こってしまう破損です。

加水分解がおこるとバニッシュの表面にべたつきが発生してしまいます。
一度べたつきが発生すると元に戻すのは難しく、バニッシュの塗装の剥がれや、
べたつきが表面につくことで発生する汚れ、ほこりの吸着などが発生します。

加水分解によるバニッシュのべたつき

加水分解の詳しい説明については、こちらの記事をご確認ください。
エナメルや合成皮革素材のべたつきの原因は?べたつきの原因と対策、保管方法について

バニッシュの修理について

バニッシュの修理は、一見すると面積が小さいので、
簡単な修理にも感じられるかもしれませんが、
バニッシュにでこぼこやはみだしが出ないように塗装をするためには、
高い技術力を必要とします。

①バニッシュの色あせや塗料の剥がれ修理

バニッシュはレザーの端の部分ということもあり、
擦れることが多い部分になります。

そのため、何度も擦れているうちに塗料やコーティングが剥がれてしまうことがあります。

塗料での剥がれであれば、見た目にわかりやすいのですが、
バニッシュ磨きのコーティングでは見た目にはわかりにくいことも多いので、
触ってみてツルツルしていないと感じるようであれば、
バニッシュ磨きのコーティングが剥がれてしまっている可能性があります。

バニッシュ剥がれの修理【before】

バニッシュの加工が剥がれてしまうとバニッシュ部分を守る物が無くなってしまうため、
表面の革の破れや、張り合わせてあった表面と裏地の剥がれなどの原因となってしまいます。

ただ、バニッシュ部分の剥がれや色あせであれば、
バニッシュを再度バニッシュ塗装やバニッシュ磨きでコーティングし直すことで、修理が可能です。

バニッシュ剥がれの修理【after】

また、バニッシュ自体が剥がれていなくても、
バニッシュの劣化により、デコボコになってしまうこともあります。

デコボコになってしまったバニッシュ修理【before】

これはバニッシュ塗装でよく起こる現象で、
開閉でよく動くふち周りにおこりやすい現象で、
頻繁に動かすことっで塗装の内側が剥がれてしまうためにおこります。

こういった場合でも一旦元々のバニッシュ塗装を剥がし、
新たにバニッシュ塗装を行うことで、元通りに修理することが可能です。

デコボコになってしまったバニッシュ修理【after】

②皮脂油によるバニッシュの汚れのクリーニング

ハンドルのように、絶えず人の手が触れる部分には、
皮脂油によって皮脂汚れができてしまいます。

皮脂汚れは見た目が悪くなるだけでなく、
カビやひび割れの原因にもなるため、日々のメンテナンスが重要です。

ハンドルの皮脂汚れ【before】

皮脂汚れが起こっている場合、皮脂油が深く浸透してしまっているので、
まずは、レザー部分とバニッシュ部分のシミ抜きを行います。

シミ抜き後、バニッシュの状態を見て、
必要があれば再度バニッシュの塗装やバニッシュ磨きを行うことで、
キレイにクリーニングすることが可能です。

ハンドルの皮脂汚れ【after】

③加水分解によるバニッシュのべたつきのクリーニング

加水分解は一度おこってしまうと、
完全にべたつきを拭き取ってしまってからバニッシュ塗装を施す必要があります。

バニッシュのべたつき【before】

バニッシュのべたつき【after】

また、バニッシュにべたつきが発生したということは、
他の部分でもべたつきが発生してしまっている可能性があります。
べたつきが発生すると手にべたつきが付着するだけでなく、
べたつきに触れた部分にもべたつきが付着し、拭き取ることが困難になってしまうことがあります。

バニッシュにべたつきが出ている場合は、
他にべたつきが出ている部分がないかチェックし、
バニッシュのべたつきと合わせて修理を行う必要があります。

④バニッシュが剥がれたことによる破れの修理

バニッシュの加工が剥がれて、
さらに使い続けることで、バニッシュ部分が破れてしまったり、
ほつれが出てしまった場合は、状況に合った修理が大切です。

軽いひび割れやほつれ程度であれば、
再度バニッシュ塗装を行うことで、補修することも可能ですが、
大きく表面の素材にまで破れが広がっている場合は破れてしまった表面素材の全交換を行う必要があります。

ただ、全交換といってもすべてのアイテムが表面素材の交換ができるわけではありません。

表面素材にオリジナルのプリントや模様が施されている場合、
まったく同じものを用意することができない場合があります。

バニッシュが剥がれ、表面素材にやれが発生してしまった状態

そういった場合には、お客様の了承をとったうえで、
出来る限りの傷の形成などで対応しますが、一度破れてしまった素材は
そのままにしておくと再度破れがおこり、広がることになってしまいます。

せっかく大切なアイテムを修理しても、
再度破れがおこってしまっては悲しいですよね?

そこで、革修復どっとコムでは、了承をいただいたお客様にのみ、
破れた箇所をレザーで補強する修理をご提案しています。

破れた箇所をレザーで補強した状態

レザーで破れた部分を覆うように補強することで、
これ以上の破れが発生することを防ぎ、大切なお品を長くお使いいただくことが可能です。

ただ、こちらの修理の場合、アイテムをカスタマイズすることになってしまうため、
今後ブランドのサポートを受けられなくなってしまうことになりますので、
レザーで補強を行う修理を行うかどうか、十分にお考えいただき、納得したうえでご依頼を頂く必要があります。

バニッシュのメンテナンス方法

バニッシュ部分は負荷がかかりやすいため、
日々のメンテナンスや保管方法に気を付けることで良い状態で長持ちさせることができます。

①汚れは小まめにふき取る

汚れがついた状態で放置しておくとシミやカビ、破損の原因になってしまいます。
汚れが付着してしまった場合は、なるべく速やかに汚れを拭き取ることで、
バニッシュ内部への浸透を防ぐことができます。

特に皮脂油による皮脂汚れは、利用していると付着してしまいます。
皮脂汚れを完全に防ぐことは難しいですが、
使い終わったバッグやお財布はそのままにしておくのではなく、
乾いた柔らかい布で軽く拭くことで、皮脂油の浸透を防いだり、遅らせることができます。

②クレンジング剤でキレイにメンテナンス

レザー製品の汚れ落としやツヤを保つために使われる
レザー用のクレンジング剤を使うことでもバニッシュを長持ちさせることができます。

さらにクレンジング剤はバニッシュを長持ちさせるだけでなく、
バニッシュにツヤを与え、見た目も美しく保つことができます。

また、クレンジング剤と一緒にレザー製品のコーティングを行う、
コーティング剤も合わせて使用いただくと、より一層効果が期待できます。

でも、レザー用のクレンジング剤とコーティング剤ってたくさん種類があって、
どれを使っていいのかわからないという方も多いのではないでしょうか?

そんな方は、革修復どっとコムの修復士も修復の際に実際に使用している
クレンジング剤「papa」とコーティング剤「mama」をお試しください。

③保管は風通しのよい場所で

多くの海外製ブランドは日本の高温多湿な環境に適用できず、
加水分解を起こしてしまうことがあります。

加水分解は空気中の水分とバッグや財布に使われている
溶剤やコーティング剤が反応してべたつきやバニッシュの剥がれを引き起こします。

そのため、湿度が高くなりやすい場所へバッグや財布を保管することを避け、
風通しの良い場所に保管するようにすることで、加水分解を防ぐことができます。

ただ、どうしても風通しの良い場所にアイテムを保管することが難しい場合もあると思います。

そういった場合にはアイテムと一緒に除湿剤を置いておくことで、
ある程度は大切なアイテムを湿気から守ることができます。

まとめ

バニッシュの修理やメンテナンス方法について、ご覧いただきました。

バニッシュは負荷がかかりやすい部分なので、
色あせやコーティングの剥がれがおこっているのをほおっておくと、
すぐに、表面のレザーや合成皮革素材に影響を与えてしまいます。

少しでも色あせやコーティングの剥がれがおこっている場合は、
早めにレザー専門の修理店へご相談いただくことが大切です。

 

べた付いたバニッシュの修復工程を動画で公開中!

 

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