投稿日:2018.12.19
更新日:2024.11.01
この記事の目次
大切にしていたよそ行きのバッグ、いざ使おうと思って押し入れやタンスから出してみると・・・。
え~!?バッグの中がベタベタにーっ!!ショックですよねー(´;ω;`)
このバッグの中のべたつき、多くのお客様から、お問い合わせをいただいています。
大切に保管していただけに、ショックの気持ちも大きいですよね?買った時には、こんなことになるなんて説明されていないよー。
なんて声もお聞きします。
でも、なんでバッグの中にベタベタとべたつきが出てしまうんでしょう?べたつきが出たときにはどうすればいいんでしょう?
今回はそんなバッグのべたつきについて、解説していきます!
すべてのバッグにべたつきが起こるわけではありません。
べたつきの原因は、バッグの内側に使われている素材、特に合成皮革素材にあります。
合成皮革素材は布地にポリウレタンなどの合成樹脂を塗布し、表面を革製品に似せた素材です。
高温多湿な状態で長期間保管すると、加水分解が進行し、可塑剤が分離してベタベタする状態になります。
可塑剤の役割と影響
可塑剤は素材を柔らかくするための成分で、高温多湿な環境で保管されると溶け出してベタベタの原因となります。
この状態を加水分解(かすいぶんかい)と呼び、特に輸入品の合成皮革素材に多く見られます。
加水分解の影響と対策
一度加水分解が起こると、バッグの中に物を入れるだけでベタベタして使えなくなります。
加工や拭き取りだけでは改善が難しく、再発する可能性があります。
そのため、ベタベタが発生した生地は交換することをおすすめします。
加水分解が起きにくくするためには、高温多湿な環境を避け、風通しの良い場所で保管することが重要です。
大切なバッグを長く愛用するために、適切な保管とメンテナンスを心がけましょう。
合成皮革素材のべたつきは、べたつきが起こってしまった生地を交換し、張替えることで綺麗に改善できます。
また、軽度のべたつきであれば、張替えを行わなくても改善されるケースもあります。
しかし、自分のバッグに起こっているべたつきが軽度なのか重度なのか、見分けるのは難しいですよね?
結果の判定
軽度のべたつき: 指に粘着物が付かない
重度のべたつき: 指に粘着成分が付着する
ここでは、そんな方のために簡単なべたつきテストの方法をご紹介します!
テスト方法は簡単!指で軽く5センチ程度、べたつきがおこっている生地を擦るだけ!
もし、この時に指に粘着物が無ければ、軽度のべたつきでクレンジングで改善する場合があります。
軽度のべたつきの場合は革製品を汚れから守るコーティング剤でふき取ることで、収まる場合もあります。
私たちは軽度のべたつきをふき取るときには、コーティングpapaというコーティング剤を使っています。
このコーティングpapaは革製品の修理を専門で行っている私たち革修復どっとこむが修理の現場で使うために開発したコーティング剤で、実際に修復を行っている修復士が使っているコーティング剤です。
コーティングpapaは、合成皮革素材やパテント素材のべたつきに有効なケースがあります。
革製品の汚れ落としや保湿などの効果があるクレンジングmamaとセットで販売していますが、合成皮革素材のべたつきに対しては、コーティングpapaのみで良いです。
また、合成皮革素材のべたつきだけでなく、エナメルのべたつき、色あせなどにもテストで指に付着物が無ければ改善することがあります。
この動画は実際にコーティングpapaを使用している動画です。
自分でクレンジングをするのはちょっと不安・・・
そんな方はプロの革修復士におまかせしましょう!
ちなみにパテント素材やエナメルにご使用される場合は、量を多めに少しだけ力を入れて何度か拭いてください!
次に指で擦って指に粘着物や生地が付着してしまう場合は張替えが必要になります。
上の写真のように生地がはがれてしまったり、指にベタベタや生地が貼りついてしまったりする場合は張替えを検討してみましょう。
実際にべたつきのテストをしてみて、生地がはがれたり指に貼りついたりする場合、次に気になるのは張替えの費用です。
内側の張替えのお値段は、バッグの構造によって異なります。主に、内側の構造には以下の2種類があります:
このタイプの構造は、内側の生地がバッグの外枠に落とし込まれる形で取り付けられています。このため、張替えの際には取り外しと再取り付けが比較的簡単です。
落とし込みタイプのバッグについて
落とし込みタイプのバッグは、内側の生地が袋状に落とし込まれていて、入口周りで縫い込まれている構造を持っています。
このタイプのバッグでは、大掛かりな解体作業が不要なため、比較的安価に内側の生地の張替えを行うことができます。
具体例
例えば、ルイヴィトンのバケットは落とし込みタイプに分類されます。
この構造により、修理やメンテナンスがしやすく、内部の生地を交換する際も手軽に行うことができます。
こちらのタイプは、内側の生地がバッグの外枠に縫い込まれており、取り外しと再取り付けに高度な技術が必要です。これにより、張替えの費用が少し高くなる傾向があります。
縫い込み張り合わせタイプのバッグについて
縫い込み張り合わせタイプのバッグは、バッグの縫い合わせと一緒に内側の生地が縫い込まれている構造を持っています。
このタイプのバッグでは、内側の張替えを行うためには、少なくともバッグの8辺の縫製を解く必要があります。
修理のプロセス
解体作業: バッグの縫い合わせ部分を丁寧に解きます。
張替え: 工業ミシン、八方ミシン、手縫いなどを駆使して新しい生地を張り替えます。
再縫製: 内側の生地を元の位置にしっかりと縫い込みます。
費用の違い
画像のバッグはこの工程が必要なため、縫込み張り合わせタイプの内側の張替えは、落とし込みタイプよりも料金が高くなる傾向があります。
ちなみに、お財布も基本的にはこの縫い込み張り合わせタイプに分類されます。
取り外した合皮の生地
ご紹介したように、バッグの内側の張替えはその構造によって料金に大きな影響があります。
それ以外にも、ポケットの数や内部の仕切りの有無が料金に関連してきます。
内側張替えの料金が気になる方は、こちらのリンクで内側張替えの修理料金を詳しくご確認いただけます。ぜひ参考にしてください。
(こちらのリンクに内側張替えの修理料金が紹介されていますので、ご確認ください)
お手持ちのバッグが新たに生まれ変わるお手伝いをさせていただきます!
無料診断でいただいた画像から落とし込みか張り合わせか、判断が出来ないことがあります。
上から見るだけでは、判断がつきにくいので、底面をつまんで引っ張って内部が出てきたら落とし込みタイプ、出てこなかったら縫い込み張り合わせタイプになるのです!
内側の張替えの見積もりをできるだけ正確にとるには次の4つのポイントが大切です。
この4つのポイントが分かっていると、画像が無くても大きな誤差がなく、バッグの内側の張替えのお見積りをとることができます。
ただ、文章や言葉だけではなかなか伝わらない部分もあるので、全体と内側を上から撮った画像を用意しておくと、文章や言葉で状況を伝えるよりも、誤差の無いお見積りが出てくるようになります。
縫い込み張り合わせタイプにはよく見られる加工があります。
一般的にコパやバニッシュと呼ばれる加工です。
下の写真のように、革と革の併せを隠すためにコーティングの様な加工がされている部分のことをいいます。
この写真ではふち回りが黒くなっていますが、これがバニッシュ(コバ)です。
お財布にもよく見られる加工ですが、縫込み張り合わせタイプの場合、このバニッシュも取り除く必要があり、再加工が必要なケースもあるので、見積もりの時にバニッシュの有無を伝えていただけると、見積もりの制度がさらにアップします。
張替をする上で、どうしても避けられない工程があります。
再縫製になりますが、元のステッチを取り除くと、レザーと一種に縫われた部分のレザーが、ボロボロと割れてしまうことがあります。
このように割れてしまう原因は、レザーの乾燥です。
解いて再度、縫製すると更にボロボロになってしまうので、入り口周りの細いレザー(口革と言います)も一緒に制作して交換します。
せっかく、きれいに直っても同じように保存してしまうと、合成皮革素材だとべたつきが発生してしまって意味がありません。
でも、湿度や室温を気にしつつ、きっちり保管をするのって正直大変ですよね?
そこで、オススメなのが張替えを行うときに使う生地を、合成皮革素材からシャンタン生地という少し滑りの良い高級感のある素材に張り替えてしまうことをオススメします。
シャンタン生地なら、加水分解がおきないので、べたつきが起こらず大切なバッグを長く使うことができます。
この記事を最初からここまで読んでいただけた方であれば、もうお分かりですね?
そう、べたつきを防ぐには高温多湿にならないように保管することで、バッグのべたつきは防ぐことができます。
でも、日本の夏は高温多湿、クローゼットや押し入れに保管しておくと、イヤでも避けることができなくなるのが現実、難しいですよね?
そこで、私がオススメしたいのが、保管せずに普段使いにすることです。
普段使いであれば、高温多湿の状態で長時間保管されることを回避することができます。
普段使いしたくない場合は、クローゼットや押し入れには入れず、
エアコンなどで、温度や湿度を管理できる部屋にそのまま置いておきましょう。
高温多湿になりやすい場所は避ける、これさえクリアできればバッグのべたつきとはおさらばできるのです。
もちろん、内側の張替え修理の時に、別の素材へ交換することでもべたつきの再発を防止することができます。
特にシャンタン生地であれば、長年の仕様で擦れや破れがおこることはありますが、丈夫な生地で長持ちしますし、高温多湿な状態で保管しても、べたつきが発生することがないので、気兼ねなく、保管することができます。
バッグのべたつきに関する記事、いかがだったでしょうか?
べたつきの原因、チェックの方法、張替えが必要な時の費用感、べたつきの再発を防ぐ方法など、わかっていただけましたか?
大切なバッグだからこそ、使いどころまで保管しておきたいというお気持ちはよくわかります。
しかし、どんなに大切にしていても保管中に劣化してしまっては悲しいですよね?
大切なバッグを長持ちさせるためにも適切な管理、そしてずっと閉まっておくのではなく、たまには押し入れやクローゼットから出して使ってあげることでバッグを長くお使いいただくことができます。
また、べたつきが出ても諦めるのではなく、一度私たち革製品の修復士にご相談ください。
きれいにお直しさせていただきます。
こちらは、バーキン風のバッグです!
複雑な構造も出来る限り美観を損なわないように熟練した職人が張替致しております。
こちらは、ルイヴィトンリヴィエラの内部です!
ポケット内部のみの張替も可能です!
私たちは職人の育成を重要なミッションとして、高品質な修理サービスを提供し続けるため、次の世代の職人を育てる取り組みに力を入れています。
①実践的な練習
傷んだブランド品を安く仕入れ、練習用に使用しています。
これにより、職人たちはリアルな修理経験を積むことができます。
②専門的な指導
経験豊富な職人が新しい職人に対して指導を行い、技術を継承しています。
高度な技術を伝えることで、全体のクオリティを保っています。
③多様な修理実績
ルイヴィトン、エルメス、シャネルなどのハイブランド品を取り扱い、さまざまな修理経験を積むことで、対応力を高めています。
④もったいない精神
日本の「もったいない」精神を大切にし、使い捨てではなく、修理して長く使う文化を広めています。
上記の取り組みとして、以下の方法で職人を育成しています!
私たちは福井県福井市を拠点としているフェニックス株式会社です。
お気に入りのアイテムを蘇らせるお手伝いをしています。
詳しくはこちらをご覧ください。
フェニックス株式会社 https://repair-phoenix.com/